早期退職 #1 心の葛藤

ある日、妻に「俺、会社辞めるかもしれない」と言った。あまりに唐突だったため妻はキョトンとしていた。その時は、「お父さんがそうしたいのなら辞めてもいいよ」と返事をされた。妻は、まだまだ先の話だと思っていたようだ。
漠然とした気持ちであったが、最近「もう会社辞めてもいいかな」と思う日が多くなっていた。急に話したのは、妻には事前に話しておいた方がいいと思ったからだ。
しばらくして、私は体調を崩して会社を休職することになった。
当面の生活費の不安はなかったが、妻は午前中のみパートに出ることになった。私が一人でいる時間を作ったほうがいいと思ったようである。
その仕事は朝が早かった。私は、気を遣わせて申し訳ないと思い、同じ早い時間に起きて毎日見送った。また、洗濯や掃除、洗い物も手伝うようにした。そんな毎日がしばらく続いた。
その後、私の会社で早期希望退職の募集があった。
「辞めたい」と言っておきながら、いざ、辞めるとなると色々葛藤があった。
ただ、今の仕事に残りの自分の時間と労力を使う価値を見出せない。人の人生には限りがある。体力も気力も知力も年々衰えていく。人生の後半を出来れば充実したものとしたい。また、残りの人生を台無しにしたくないと考えたときに自分がいる場所は、ここではないと思った。
一方で、途中でやめることに抵抗を感じていた。今までも途中でやめた事は、ほとんどなかった。
どうするか、葛藤する日々が続いた。
早期希望退職申込の締め切り間近になって、結論を出した。退職することに決めた。

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